『文系のための数学教室』を読んで
昨日会計の本について書いたと思えば、今日は数学の本について書く。実はおとといの割り算についての謎の記事は、これを書くための布石だったのだが、ドタバタしていて間違えてしまった。
普通、"距離"と聞くと一定のものであると考えがちで、実際家から駅までの距離が毎日変わるとしたら、定刻通りに学校に行くという概念が意味をなくしてしまう。距離に限らず単位は科学的な不変さを持つから普遍的なものとなりうるのである。
ところがこの本には面白い発言が引用されている。
「狭い日本の国土をもっと広く使うためには、全ての電車の速度を半分に落とせばいい。そうすれば、国土を今の4倍に使うことができる」
といったものだ。
このことは、「異なる2つの点abの距離」を「aからbまで行くあらゆる経路の内の最短時間」と定義すると、「電車の速度を半分にする」という行為が「ab間の距離を2倍にする」という意味を持ち得るという、極めて数学的な、ある意味机上の空論らしい論理の上に成り立っている。
だがこの意見は単なる論理の弄びの範疇にはとどまらず、建設的な意見にもなる。それは、都市ab間の移動に時間がかかるならば、その間の地点z等において中継や休憩が必要となるからだ。そこに企業が何かを構えるかもしれない。だが、近い未来どこでもドアのような機械が開発されて、都市abが一瞬で結ばれるような社会が来ると、その間にある全ての地点は存在意義を失い、誰にも見向きのされないことになりかねない。都市計画は数学的な知見を持つことにより、豊かな視点から物を語れるようになった。
数学的な視点を持つことの楽しさを教えていることもこの本の良さだが、1番は、数学下手でも数学を楽しめばいいじゃないと訴えていることだ。数学に苦手意識を持っている文系に勧めたい良書。
- 作者: 小島寛之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/11/19
- メディア: 新書
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